眠りたいのに眠れない夜
不眠に悩んでいると、ぐっすり眠ることが遠い夢のように感じられるかもしれません。何度も寝返りを打つばかりで、なかなか眠れない夜が続くこともあります。
眠れないつらさは、寝つきの悪さだけではありません。眠っても途中で目が覚めてしまい、もどかしく感じることもあります。
閉経後の女性の最大61%が不眠の症状を経験していると報告されており、心身の健康や日々の暮らしにも影響を及ぼすことがあります。また、女性が不眠症になるリスクは男性の約2倍で、4人に1人が生涯のどこかで症状を経験するとされています。
更年期に起こるホルモンの変化は、こうした睡眠の問題を悪化させ、睡眠リズムをさらに乱すことがあります。更年期の不眠がもたらす影響を知ることは、症状に対処し、毎日をより快適に過ごすための大切な一歩です。
更年期が不眠の原因に?
更年期には、不眠に悩む女性が多くいます。ときどき眠れない人もいれば、日常生活に支障が出るほど症状が重い人もいます。Bakerら(2018)の報告では、更年期の女性の26%が、生活に影響する不眠を経験しています。
ホルモンの変化により、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたり、朝すっきり起きられなくなったりすることがあります。ストレスを和らげることや運動、医療機関への相談が、症状の改善に役立つとされています。
年齢を重ねるにつれ、不眠に悩む女性は増えていきます。米国の女性の健康に関する大規模研究「SWAN」(Leeら、2019)では、不眠の割合が次のように高まることが示されています。
- 更年期に入る前:16〜42%
- 閉経への移行期:39〜47%
- 閉経後:35〜60%(「閉経後の体重やほてりなどへの影響」、2021年)
更年期と不眠にはどんな関係がある?
更年期には、ほてりや気分の浮き沈み、体重の増加など、思いがけない不調に戸惑うことがあります。睡眠の悩みもそのひとつです。閉経後の女性の最大60%が、たびたび眠れない症状を経験すると報告されています(Jehanら、2015)。
その背景には、次のような要因があります。
ホルモンの変化
更年期には女性ホルモンが減少し、睡眠を含む日々の生活に影響が出ることがあります。エストロゲンとプロゲステロンは、睡眠リズムの調整にも重要な役割を果たしています。特に、プロゲステロンには、眠りを促す作用があります。これらのホルモンが減ると、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりすることがあります。眠れないことへの不安やストレスが重なり、さらに眠りにくくなることもあります。
ほてり・寝汗
更年期は、ホルモンの大きな変動に心身が振り回されやすい時期です。よく見られる症状に、急に体が熱くなる「ホットフラッシュ」や寝汗があります。
突然熱さがこみ上げ、体温がどんどん上がるように感じると、戸惑うこともあるでしょう。原文では、ホルモンの急激な減少によってアドレナリンが増えるためと説明しています。アドレナリンは、ストレスを感じたり、危険に直面して身を守ろうとしたりするときに働く物質です。
こうした変化で眠りにくくなり、不安が強まることもあります。寝つけない日が続くと、不眠につながり、疲れやイライラが取れなくなることもあります。
メラトニンの減少
年齢を重ねると、眠りが浅くなったり、不眠に悩まされたりすることが増えます。睡眠と覚醒のリズムを整えるホルモン「メラトニン」は、加齢とともに減少し、眠りにくさに関わる可能性があるとされています(Leeら、2019)。
女性では、更年期にもメラトニンが減少する可能性があり、この時期に睡眠の悩みが増える一因と考えられています。ただし、更年期がメラトニンの量にどう影響するかは、さらなる研究が必要です。
心の健康
睡眠と気分は互いに影響し合い、不眠はうつや不安のリスクを高めることが研究で示されています(Leeら、2019)。また、更年期のホルモンの変化は、睡眠の問題を悪化させ、気分にも悪影響を及ぼすことがあります。
不眠症の症状
不眠症には、なかなか寝つけない、夜中に目が覚めるなど、さまざまな症状があります。「眠れない」といっても、その原因はひとつとは限りません。
不眠に悩む人には、次のような症状が見られることがあります。
- 寝つくまでに30分以上かかる
- 睡眠時間が6時間未満の日が週に3日以上ある
- 朝早く目が覚めてしまう
- 昼寝をしても疲れが取れず、元気が戻らない
- 眠気やだるさが続く
- 十分に眠れるか、いつも気になってしまう
不眠は、心と体の健康にも影響します。睡眠不足が続くと、活力や集中力、免疫機能が低下し、ほかの深刻な病気のリスクも高まることがあります。
また、次のような不調が現れることもあります。
- 不安を感じる
- イライラする
- 緊張が続く
- 集中力が続かない
- 物事に集中したり、思い出したりするのが難しくなる
- ミスや不注意によるトラブルが増える
- 片頭痛が起こる回数が増える
- お腹の張りなど、胃腸の不調が出る
更年期の不眠を改善するための治療

更年期には、ホルモンの変動によってさまざまな不調が現れます。日中の頭のぼんやり感や関節の痛みに加え、夜も十分に眠れないと、心身の負担はさらに大きくなります。
更年期の不眠には、いくつかの治療法があります。そのひとつが、減少した女性ホルモンを補う「ホルモン補充療法」です。ほてりや寝汗などを和らげることで、睡眠の改善も期待できます。
ホルモンを使わない治療では、症状に応じて抗うつ薬などが使われることもあります。日本でも処方されているSSRIという種類の抗うつ薬は、更年期のうつ症状に加え、一部ではほてりへの効果も報告されています。医師と相談し、自分の症状に合った治療を選びましょう。
更年期の不眠にも、改善に向けてできることがあります。気分の浮き沈みや不安、落ち込みが気になるときは、カウンセリングも選択肢のひとつです。話すことで気持ちを整理し、自分に合った対処法を探せます。心の不調が和らぐと、眠りや日々の調子もよくなることがあります。
更年期の不眠も、適切なサポートを受けることで和らぎ、毎日をより快適に過ごせるようになります。
更年期の睡眠の悩みを和らげるセルフケア

ハーブやサプリメントを使っても、更年期の症状が必ず和らぐとは限りません(Johnsonら、2019)。ほかにも、症状を和らげるために試せる方法があります。
カフェイン・ニコチン・アルコールを控える
まずは、毎日の習慣を見直してみませんか?喫煙やカフェイン、アルコールの摂取は、ぐっすり眠る妨げになることがあります。「お酒を飲むとよく眠れる」と思われがちですが、少量でも睡眠の質を下げることがあります。特に午後から夜にかけては、カフェインや飲酒、喫煙を控えてみましょう。こうした小さな習慣の見直しが、眠りの改善につながることがあります。
アロマテラピー
アロマテラピーは、医療の分野でも注目されています。特にラベンダーの精油の香りを吸い込むことで、ほてりが和らぎ、リラックスできる可能性が報告されています(Nordqvist、2019)。
女性100人を対象とした臨床研究では、12週間続けたところ、ほてりが50%減少したと報告されています(Johnsonら、2019)。また、マッサージと組み合わせると、どちらか一方だけの場合よりも症状を和らげる効果が高かったとされています。
催眠療法
2019年のレビュー研究では、催眠療法が更年期の不調を和らげる可能性が示されています。ほてりの頻度や強さを最大50%抑えるとされ、ほてりで眠れない人にも役立つ可能性があります(Johnsonら、2019)。
こうした結果から、催眠療法も、更年期の症状に対する薬を使わない対処法のひとつとして考えられています。
ヨガ
心と体の両面から不調を和らげる方法として、ヨガも注目されています(Nichols、2021)。近年の研究では、更年期の不安や、ストレスによる不眠を軽減する可能性が示されています。
ただし、効果はヨガの種類や、その人の症状によって異なるため、自分に合った方法を選ぶことが大切です。研究結果は一致していませんが、更年期の症状を和らげる可能性はあると考えられています。
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